歴史と由来
ビタミンCの歴史は壊血病との戦いの歴史である。大航海時代、長期航海中の船乗りが歯茎の出血、関節痛、衰弱で次々と倒れた。1747年、イギリス海軍の軍医ジェームズ・リンドがレモン果汁の壊血病予防効果を実験的に証明。これは史上初の対照臨床試験とされる。1928年、ハンガリーの化学者アルベルト・セント=ジェルジがパプリカからビタミンCを結晶として単離。この業績で1937年にノーベル生理学・医学賞を受賞した。
美容分野での応用は1990年代以降。「ビタミンC誘導体」の開発が大きなブレークスルーとなった。L-アスコルビン酸そのものは不安定で酸化しやすく、化粧品への配合が困難だったが、リン酸エステル型(APM、APS)、グルコシド型(AA-2G)など安定化誘導体の開発により、化粧品成分としての地位を確立した。
科学的背景
ビタミンCの多面的な作用:1. コラーゲン合成:プロリンとリジンのヒドロキシル化に必要な補因子
2. 抗酸化:活性酸素種(ROS)を消去し、酸化ストレスから細胞を保護
3. 美白:チロシナーゼ活性の阻害によるメラニン生成抑制
4. 皮脂抑制:皮脂腺細胞での脂質合成を抑制する報告がある
ビタミンC誘導体の比較:
・APPS(パルミチン酸アスコルビルリン酸3Na)── 両親媒性、浸透力が高い
・APS(アスコルビルリン酸Na)── 水溶性、安定性が高い
・AA-2G(アスコルビン酸グルコシド)── 非常に安定、持続型
知られざるトリビア
・人間を含む霊長類、モルモット、一部のコウモリは体内でビタミンCを合成できない。ほとんどの哺乳類はグルコースからビタミンCを合成できるのに。遺伝子変異でL-グロノラクトンオキシダーゼが失われたため。・ライナス・ポーリング(ノーベル化学賞・平和賞の2冠)は晩年、メガドーズビタミンC療法を強く推奨した。科学界では賛否両論あり、今も議論が続いている。
限界と論争
ビタミンCの経口摂取は吸収に限界があり、一度に1g以上摂取しても尿中排泄量が増えるだけとされる。化粧品として塗布する場合、純粋なL-アスコルビン酸はpH 3.5以下でないと皮膚に浸透しにくく、かつ光と熱で急速に分解する。「ビタミンC配合」と謳う製品の中には、開封後数週間で大半が分解しているものもある。
参考文献
・Lind J. "A Treatise of the Scurvy." 1753.
・Szent-Györgyi A. "Observations on the function of peroxidase systems and the chemistry of the adrenal cortex." Biochem J. 1928.
・Pullar JM, et al. "The Roles of Vitamin C in Skin Health." Nutrients. 2017.
・Szent-Györgyi A. "Observations on the function of peroxidase systems and the chemistry of the adrenal cortex." Biochem J. 1928.
・Pullar JM, et al. "The Roles of Vitamin C in Skin Health." Nutrients. 2017.