歴史と由来
1934年、コロンビア大学のカール・マイヤーとジョン・パーマーが牛の眼球の硝子体から発見。「hyaloid(硝子体の)」+「uronic acid(ウロン酸)」からhyaluronic acidと命名された。1940年代には関節液のクッション材としての機能が注目され、関節炎治療への応用研究が始まる。日本では1987年に膝関節症治療薬として承認(アルツ®)。
美容成分としての地位を確立したのは1990年代。資生堂が化粧品原料としての応用を先導し、2000年代の「うるおい」ブームの中心成分となった。現在では低分子ヒアルロン酸、スーパーヒアルロン酸(アセチルヒアルロン酸)、レチノール複合ヒアルロン酸など多様な誘導体が開発されている。
科学的背景
ヒアルロン酸はN-アセチルグルコサミンとグルクロン酸の二糖が繰り返し結合した直鎖状のムコ多糖。分子量は数千〜数百万と幅がある。真皮では線維芽細胞が産生し、コラーゲン線維の間を満たして「クッション」の役割を果たす。皮膚1cm²あたり約200μgのヒアルロン酸が存在するが、40代で新生児の約半分に減少するとされる。
体内のヒアルロン酸の半減期は約24〜48時間と短く、常に合成と分解が繰り返されている。
知られざるトリビア
・ニワトリのトサカはヒアルロン酸の宝庫。初期の化粧品原料や医薬品はトサカから抽出されていた。現在は微生物発酵法(乳酸菌)が主流。・「1gで6リットル」は理論値。実際の保水力は条件で大きく変わる。
限界と論争
高分子ヒアルロン酸は分子量が大きすぎて角質層を透過できない。塗布した場合は皮膚表面で保水膜を形成するに留まり、真皮のヒアルロン酸を直接補充するものではない。低分子ヒアルロン酸は角質層への浸透が確認されているが、真皮まで到達するかは不明。
ヒアルロン酸注入(フィラー)は物理的に真皮に注入するため即効性があるが、半年〜2年で分解吸収される。
参考文献
・Meyer K, Palmer JW. "The polysaccharide of the vitreous humor." J Biol Chem. 1934.
・Laurent TC, Fraser JR. "Hyaluronan." FASEB J. 1992.
・Laurent TC, Fraser JR. "Hyaluronan." FASEB J. 1992.