毛髪の構造

毛髪は3層構造をしている:

1. メデュラ(毛髄質)──中心部。太い髪にのみ存在し、細い髪では欠如していることもある。保温や光の反射に関わるとされるが、機能は完全には解明されていない。

2. コルテックス(毛皮質)──主体部分。ケラチンタンパク質で構成され、髪の強度と弾力を担う。メラニン色素もここに存在し、髪の色を決定する。コルテックスの水分量は約11〜13%で、これが減少するとパサつきの原因に。

3. キューティクル(毛小皮)──最外層。魚の鱗のように重なった薄い層が髪を保護する。ダメージを受けるとキューティクルが剥がれ、枝毛や切れ毛の原因となる。健康なキューティクルは約7〜10層で、光を反射してツヤを生む。

毛髪の約80〜90%はケラチンタンパク質で構成されている。ケラチンはシスチンというアミノ酸を多く含み、シスチン同士が「S-S結合(ジスルフィド結合)」で架橋されることで髪の強度が保たれている。パーマはこのS-S結合を切断・再形成する技術だ。

毛周期(ヘアサイクル)

毛髪は一定のサイクルで成長と退行を繰り返す:

段階期間特徴
成長期(アナゲン)2〜6年毛母細胞が活発に分裂。髪の約85%がこの段階
退行期(カタゲン)2〜3週間細胞分裂が停止。毛根が縮小
休止期(テロゲン)3〜4ヶ月毛が脱落し、新しい毛の準備が始まる

1日に約50〜100本の毛髪が自然脱毛するのは、休止期を終えた毛が入れ替わるため。これは正常な現象であり、それ自体は薄毛の兆候ではない。

成長期の長さが髪の最大長を決める。頭髪の成長期は2〜6年と長いが、眉毛やまつ毛は数ヶ月と短い。これが体の部位によって毛の長さが異なる理由だ。

加齢と毛髪の変化

年齢とともに毛髪にも変化が起こる:

  • 白髪:メラノサイト(色素細胞)の機能低下で30代後半から。50代で平均50%が白髪に
  • 髪の細り:コルテックスのケラチン密度が低下。40代から髪1本1本が細くなる
  • ハリ・コシの低下:S-S結合の減少と水分保持力の低下
  • 成長期の短縮:成長期が短くなることで髪が十分に伸びる前に抜ける
  • 女性の薄毛(FPHL):閉経後にエストロゲンが減少すると、相対的に男性ホルモンの影響が強まり、分け目が広がるタイプの薄毛が増える

頭皮ケアの科学

「髪は死んだ細胞」だが、「頭皮は生きた組織」── このことを理解すると、ヘアケアのアプローチが変わる。髪の質を根本的に改善するには、頭皮環境を整えることが重要になる。

頭皮の血流が良いほど毛母細胞への栄養供給が増え、太くて健康な毛髪が育つ。プラセンタエキスに含まれる成長因子の中でも、VEGF(血管内皮増殖因子)は血管新生を促進し、理論的には頭皮の血流改善に寄与する可能性がある。

頭皮の常在菌バランスも重要だ。マラセチア菌が過剰に増殖するとフケや脂漏性皮膚炎の原因に。洗いすぎによる皮脂の除去しすぎも、逆に皮脂の過剰分泌を招くことがある。

年代別ヘアケアのポイント

40代のヘアケア

  • 髪の細りが始まる時期。ボリュームアップシャンプーへの切り替えを検討
  • 頭皮マッサージを習慣化。シャンプー時に指の腹で頭皮を動かすように
  • タンパク質(ケラチンの材料)とビオチン(ビタミンB7)を意識的に摂取
  • ドライヤーは頭皮から20cm離し、根元を立ち上げるように乾かすとボリュームアップ
  • カラーリングの頻度は月1回程度に。頻繁な施術はキューティクルを傷める

50代のヘアケア

  • 閉経後のエストロゲン減少で髪のハリ・コシが著しく低下。ハリコシ系のシャンプー+頭皮美容液の併用を
  • 頭皮の乾燥が進むため、洗髪は1日1回に。シャンプーの量は少なめに
  • 分け目の薄さが気になり始めたら、分け目を定期的に変える。同じ位置の紫外線ダメージを分散
  • 大豆イソフラボン(植物性エストロゲン)と鉄分の摂取を強化
  • 白髪染めはヘナや低刺激タイプを検討。頭皮への負担を軽減

60代のヘアケア

  • 髪の乾燥が顕著に。洗い流さないトリートメントやヘアオイルでの保湿を日課に
  • 頭皮も顔と同じく薄くなり敏感に。低刺激アミノ酸系シャンプーが安心
  • ブラッシングは豚毛や猪毛のブラシで優しく。頭皮の血行促進と油分の分配に効果的
  • タンパク質と亜鉛(牡蠣、牛肉、卵)の摂取を特に意識。毛髪の材料を十分に
  • 睡眠中の摩擦でキューティクルが傷む。シルクの枕カバーが髪に優しい

どの年代でも共通して大切なのは、「頭皮は顔の延長」という意識。顔にスキンケアをするように、頭皮にもケアを行うことが、健康で美しい髪を保つ鍵だ。